断薬・減薬についての取り組みまとめ

断薬・減薬についての取り組みまとめ

本資料は、社会福祉法人ベテスタにおける断薬・減薬についての取り組みをまとめたものです。
対象期間:2015年8月~2017年8月

○継続治療について

・定期受診ではなく「継続治療」(継続して治療が必要なので受診)というスタンス。
・受診する前に健康検証委員会で検討会議施行。
 利用者の状況を把握して服薬している薬を確認・検討。Dr.への申し送り・検討してもらう事・交渉する事案などを話し合う。
・継続治療用紙作成。
 現在服用している薬・服用している薬の副作用の数・服薬経緯・保護者の意向・検証委員会からの申し送りを記載。施設内の会議にて決裁を求める。
・受診。
 継続治療用紙を持参し、Dr.に報告・申し送りをし、場合によっては交渉をする。

○服薬状況

2015年8月~2017年8月までの服薬状況の変化を調べると、
   なんらかの薬を飲んでいる 17名
   全ての薬の断薬が出来た   3名
   一部の薬を断薬出来た    9名
   薬を減量出来た       3名
   減薬後に最低量に戻した   2名

 利用者が飲んでいる・飲んでいた薬…29種類
 平均  2015年 5.6錠+0.8g服用(17名服用)
     2017年 4.7錠+0.8g服用(14名服用)

○薬別の変化

29種類のうち、よく飲まれている3種を取りあげる。また、処方されたときについてくる薬の説明書と医学書院「治療薬マニュアル2017」に載っている副作用を比較。

1.【リスパダール錠】


薬の働き:興奮や不安を抑え、気分を安定させたり、意欲の低下を改善する薬です。
注意事項:この薬を服用中は飲酒を避けてください。眠気・注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、車の運転や危険な作業を避けてください。

副作用:395種類
〈重大〉
1)悪性症候群(無動緘黙,強度の筋強剛,嚥下困難,頻脈,血圧の変動,発汗等に引き続き発熱)→中止し,体冷却,水分補給等の全身管理とともに処置.本症発症時には白血球増加,血清CK上昇,又ミオグロビン尿を伴う腎機能低下あり(高熱が持続し,意識障害,呼吸困難,循環虚脱,脱水症状,急性腎不全へ移行し,死亡例の報告)2)遅発性ジスキネジア(長期投与:口周部等の不随意運動)→中止後も持続あり3)麻痺性イレウス〔腸管麻痺(食欲不振,悪心・嘔吐,著しい便秘,腹部の膨満・弛緩及び腸内容物のうっ滞等の症状)を来し,麻痺性イレウスに移行の報告〕→中止.動物で制吐作用を有することから悪心・嘔吐を不顕性化することあり注意4)抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)(外国:低Na血症,低浸透圧血症,尿中Na排泄量の増加,高張尿,痙攣,意識障害等を伴うSIADHの報告)5)肝機能障害(AST・ALT・γ-GTPの上昇等を伴う),黄疸→中止等処置6)横紋筋融解症(筋肉痛,脱力感,CK上昇,血中・尿中ミオグロビン上昇)→中止し処置.急性腎不全の発症に注意7)不整脈(心房細動,心室性期外収縮等)→中止等処置8)脳血管障害→中止等処置9)高血糖・糖尿病性ケトアシドーシス,糖尿病性昏睡→口渇,多飲,多尿,頻尿等に注意.血糖値の測定等の観察→インスリンの投与等処置10)低血糖(脱力感,倦怠感,冷汗,振戦,傾眠,意識障害等)→中止し処置11)無顆粒球症,白血球減少→中止し処置12)肺塞栓症,深部静脈血栓症(息切れ,胸痛,四肢の疼痛,浮腫等)→中止し処置等13)持続勃起症(α交感神
経遮断作用に基づく)→処置                                     
〈その他〉
1)感染症・寄生虫症(気管支炎,鼻咽頭炎,咽頭炎,肺炎,胃腸炎,感染,膀胱炎,耳感染,インフルエンザ,限局性感染,下気道感染,鼻炎,副鼻腔炎,皮下組織膿瘍,上気道感染,尿路感染,ウイルス感染,蜂巣炎,扁桃炎,眼感染,中耳炎,爪真菌症,ダニ皮膚炎)2)血液・リンパ系(貧血,血小板減少症,好中球減少症)3)免疫系(アナフィラキシー反応,過敏症)→中止等処置4)内分泌障害(高プロラクチン血症)5)代謝・栄養障害(食欲不振・亢進,高脂血症,多飲症,食欲減退,高尿酸血症,水中毒)6)精神(不眠症,不安,激越,妄想,うつ病,幻覚,抑うつ症状,躁病,被害妄想,精神症状,睡眠障害,緊張,自殺企図,錯乱状態,リビドー亢進・減退,徘徊,神経過敏,気力低下,情動鈍麻,無オルガズム症,悪夢)7)神経(アカシジア,振戦,傾眠,構音障害,ふらつき,頭痛,ジストニー,鎮静,めまい,立ちくらみ,運動低下,ジスキネジー,パーキンソニズム,錐体外路障害,精神運動亢進,無動,痙攣,注意力障害,構語障害,しびれ感,よだれ,仮面状顔貌,頭部不快感,嗜眠,錯感覚,意識レベルの低下,会話障害(舌のもつれ等),味覚異常,記憶障害,てんかん,末梢性ニューロパチー,協調運動異常,過眠症,弓なり緊張,失神,平衡障害,刺激無反応,運動障害,意識消失)→減量・抗パーキンソン薬の投与等処置8)眼(調節障害,眼球回転発作,眼瞼痙攣,視力低下,眼脂,結膜炎,網膜動脈閉塞,霧視,眼充血,眼瞼縁痂皮,眼乾燥,流涙増加,羞明,緑内障,術中虹彩緊張低下症候群)9)耳・迷路障害(耳痛,回転性めまい,耳鳴)10)心臓(頻脈,洞性頻脈,動悸,心室性期外収縮,房室ブロック,右脚ブロック,上室性期外収縮,不整脈,徐脈,左脚ブロック,洞性徐脈)→中止等処置11)血管障害(起立性低血圧,低血圧,高血圧,末梢冷感,潮紅,末梢循環不全)→増量は徐々に行う等慎重に12)呼吸器・胸郭・縦隔障害(鼻閉,呼吸困難,咳嗽,鼻漏,副鼻腔うっ血,睡眠時無呼吸症候群,口腔咽頭痛,鼻出血,肺うっ血,喘鳴,嚥下性肺炎,発声障害,気道うっ血,ラ音,呼吸障害,過換気)13)胃腸(便秘,流涎過多,悪心,嘔吐,嚥下障害,口内乾燥,胃不快感,下痢,胃炎,腹部膨満,腹痛,消化不良,上腹部痛,唾液欠乏,腸閉塞,膵炎,歯痛,糞塊充塞,便失禁,口唇炎,舌腫脹)14)肝胆道系(肝機能異常)→中止等処置15)皮膚・皮下組織(多汗症,発疹,そう痒症,湿疹,過角化,紅斑,ざ瘡,脱毛症,血管浮腫,皮膚乾燥,頭部粃糠疹,脂漏性皮膚炎,皮膚変色,皮膚病変,蕁麻疹,水疱)16)筋骨格・結合組織(筋固縮,筋肉痛,斜頸,筋攣縮,関節硬直,筋力低下,背部痛,四肢痛,関節痛,姿勢異常,筋骨格痛,頸部痛,筋骨格系胸痛,筋痙縮)17)腎・尿路(排尿困難,尿閉,頻尿,尿失禁)→中止等処置18)生殖系・乳房(月経障害,無月経,乳汁漏出症,不規則月経,射精障害,女性化乳房,性機能不全,乳房不快感,勃起不全,月経遅延,希発月経,持続性勃起症,腟分泌物異常,乳房腫大,乳房分泌)19)全身・投与局所様態(易刺激性,倦怠感,口渇,無力症,疲労,歩行障害,発熱,気分不良,胸部不快感,胸痛,顔面浮腫,末梢性浮腫,疼痛,不活発,浮腫,低体温,インフルエンザ様疾患,悪寒,薬剤離脱症候群)20)臨床検査(ALT・CK・AST・血中クレアチニン・血中ブドウ糖・LDH増加,血圧低下,血中プロラクチン増加,血中Na減少,血中TG増加,血中尿素増加,心電図異常,心電図QT延長,好酸球数増加,γ-GTP増加,HbA1c増加,血小板数減少,総蛋白減少,体重減少・増加,白血球数減少・増加,尿中蛋白陽性,Al-P増加,Ht減少,心電図T波逆転,血中尿酸増加,尿中血陽性,肝酵素上昇,尿糖陽性,心電図異常・QT延長・T波逆転は中止等処置)21)傷害・中毒・処置合併症(転倒・転落,引っかき傷,処置による疼痛)

・べテスタでの服薬状況と変化
  服用者       4名
  断薬できた     2名
  減薬できた     2名
  増量した      0名

2.【デパケンR】(デパケンR細粒・セレニカR・セレニカR細粒含む)


薬の働き:てんかんの発作を抑える、てんかんに伴う気分の不安定を改善する、興奮を抑える、片頭痛を予防する薬です
注意事項:この薬をかんだり、つぶしたりしないでください。眠気・注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、車の運転や危険な作業を避けてください。妊娠中、妊娠している可の威勢のある方、授乳中の方は医師・薬剤師にそのことを伝えてください。

副作用:92種類
〈重大〉
1)劇症肝炎等の重篤な肝障害(黄疸,脂肪肝等)→定期的な検査,異常あれば中止し処置2)高アンモニア血症を伴
う意識障害→定期的にアンモニア値を測定する等.異常で中止し処置3)溶血性貧血,赤芽球癆,汎血球減少,重篤な血小板減少,顆粒球減少→中止等処置4)急性膵炎(激しい腹痛,発熱,嘔気・嘔吐等の症状,膵酵素値の上昇)→中止し処置5)間質性腎炎,ファンコーニ症候群→中止等処置6)中毒性表皮壊死融解症(TEN),スティーブンス・ジョンソン症候群→中止し処置7)過敏症症候群(初期症状:発疹・発熱,リンパ節腫脹,肝機能障害,白血球増加,好酸球増加,異型リンパ球出現)→中止し処置.発疹,発熱,肝機能障害等の症状が再燃或いは遷延化することあり,注意8)脳の萎縮,認知症様症状(健忘,見当識障害,言語障害,寡動,知能低下,感情鈍麻等),パーキンソン様症状(静止時振戦,硬直,姿勢・歩行異常等)→中止し処置.中止後1~2カ月で回復9)横紋筋融解症:筋肉痛,脱力感,CK上昇,血中・尿中ミオグロビン上昇→中止し処置10)抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)(低Na血症,低浸透圧血症,尿中Na量増加,高張尿等)→水分摂取の制限等処置11)間質性肺炎・好酸球性肺炎(咳嗽,呼吸困難,発熱等)→速やかに胸部X線,胸部CT等の検査.疑われた場合,中止し副腎皮質ホルモン剤投与等の処置
〈その他〉
1)血液(貧血,白血球減少,好酸球増加,低フィブリノゲン血症,血小板凝集能低下)→減量等処置2)精神神経(傾
眠,失調,めまい,頭痛,不眠,不穏,感覚変化,振戦,視覚異常,抑うつ)→減量等処置3)消化器(悪心・嘔吐,食欲不振,胃部不快感,便秘,口内炎,下痢,食欲亢進,腹痛)→減量等処置4)肝臓(AST・ALT・Al-Pの上昇)5)皮膚(脱毛)6)過敏症(発疹)7)その他〔倦怠感,夜尿,頻尿,鼻血,口渇,浮腫,月経異常(月経不順,無月経),多嚢胞性卵巣,発熱,カルニチン減少,血尿,高アンモニア血症,歯肉肥厚,体重増加,尿失禁〕

・べテスタでの服薬状況と変化
  服用者  9名
  断薬   0名
  減薬   2名
  変化なし 5名
  増量   2名

3.【アレビアチン】


薬の働き:てんかんの発作を抑える薬です
注意事項:自己判断で服薬を中止したり、減らしたりすると病状が悪化することがあります。医師の指示を守って服用してください。眠気・注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、車の運転や危険な作業を避けてください。

副作用:93種類
〈重大〉
1)中毒性表皮壊死融解症(TEN),スティーブンス・ジョンソン症候群(発熱,紅斑,水疱・びらん,そう痒感,咽頭痛,眼充血,口内炎等)→中止し副腎皮質ホルモン剤の投与等処置2)過敏症症候群(初期症状として発疹,発熱,更にリンパ節腫脹,肝機能障害等の臓器障害,白血球増加,好酸球増加,異型リンパ球出現等を伴う遅発性の重篤な過敏症状)→中止し処置.なお,ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)等のウイルスの再活性化を伴うことが多く,発疹,発熱,肝機能障害等の症状が再燃あるいは遷延化することがあるので注意3)SLE様症状(発熱,紅斑,関節痛,肺炎,白血球減少,血小板減少,抗核抗体陽性等)→中止し処置4)再生不良性貧血,汎血球減少,無顆粒球症,単球性白血病,血小板減少,溶血性貧血,赤芽球癆→減量又は中止等処置5)劇症肝炎,肝機能障害,黄疸(劇症肝炎,著しいAST・ALT・γ-GTPの上昇等の重篤な肝機能障害,黄疸)→中止等処置6)間質性肺炎(発熱,咳嗽,呼吸困難,胸部X線異常,好酸球増多等を伴う間質性肺炎)→中止し副腎皮質ホルモン剤投与等処置7)[注]心停止,心室細動,呼吸停止(注射速度や患者の状態により起こる)→中止し,直ちに処置8)[注]強直発作→中止等処置9)悪性リンパ腫,リンパ節腫脹→減量等処置10)小脳萎縮(長期投与で小脳萎縮:持続した血中濃度の上昇と関連が示唆→小脳症状(眼振,構音障害,運動失調等)に注意し定期的に検査等)→減量または中止等処置11)横紋筋融解症(筋肉痛,脱力感,CK上昇,血中・尿中ミオグロビン上昇等)→中止し処置.急性腎不全の発現に注意12)急性腎不全・間質性腎炎→中止し処置13)悪性症候群(発熱,意識障害,筋強剛,不随意運動,発汗,頻脈等)→中止,体冷却,水分補給,呼吸管理等処置.発症時には白血球増加,血清CK上昇がみられることが多く,ミオグロビン尿を伴う腎機能低下がみられることがある
〈その他〉
1)過敏症(猩紅熱様・麻疹様・中毒疹様発疹)→中止2)血液(巨赤芽球貧血)→減量等処置3)肝臓(黄疸等の肝障害)4)腎臓(蛋白尿等の腎障害)5)精神神経〔不随意運動(ジスキネジア,舞踏病アテトーゼ,アステリクシス等),ニューロパシー,注意力・集中力・反射運動能力等の低下,痙攣,てんかん増悪〕([内]眩暈,運動失調,頭痛,神経過敏,不眠)([注]倦怠感)6)眼([内]複視,視覚障害,眼振,白内障)→定期的に視力検査7)消化器([内]悪心・嘔吐,便秘)8)歯肉増殖(連用:歯肉増殖)9)骨・歯(連用:くる病,骨軟化症,歯牙の形成不全)→異常(血清Al-P値の上昇,血清Ca・無機Pの低下等)が発現→減量又はビタミンDの投与等処置10)内分泌系〔甲状腺機能検査値(血清T3,T4値等)の異常,高血糖〕11)その他〔血清葉酸値の低下,CK上昇,免疫グロブリン低下(IgA,IgG等)〕([内]発熱,多毛)([注]口渇,血管痛)

・べテスタでの服薬状況と変化
  服用者  3名
  断薬   1名
  減薬   2名

○断薬・減薬の理由

患者サイドの訴えで減薬・断薬が進むことがほとんどである。
理由は以下の4つが多い。

・「状態が落ち着いている」
症状が2年以上起こっていない。硬直・痙攣などの症状の回数が減っている。こだわりや繰り返しの行動はあるが支援することで問題がない。
*「家族からの断薬・減薬希望」も含める

・「副作用が強い」
作業中に眠ってしまう。トイレの中で眠ってしまう

・「古い薬だから」
発作がないなら古い薬から止める

・「他の薬の副作用止めとして処方していた」
副作用を出す薬を断薬した為、副作用止めの薬が必要なくなった。

村瀬はな

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