2017年度の抱負
支援にマニュアルがあるとすれば、それは個々の障害特性からの対応を具体的に示すということになります。具体的対応は必要なことですが、なぜそれが必要となるのかという解説もあったほうがよいでしょう。しかしそうした支援を実施する前提にはさらに必要なことがあります。これはマニュアル化できる性質のことではありません。それが利用者との関係性です。支援する側の専門職としてのあなたの立場と、支援を受ける側である利用者の立場。その両者の関係性を客観的に捉えなおす必要があります。新人に向ける言葉として、本日はこの点を述べたいと思います。
さて、利用者を前にした「あなた」は、如何なる存在でしょうか?あなたはこれまで利用者を前にした「あなた」の存在について考えたことがあるでしょうか?というのは利用者を前にした「あなた」は、「あなた」の知っている「あなた」ではないのです。利用者を前にした「あなた」は、優生思想に満ちた競争社会を生き、まわりの空気を過敏に読み取ってきた健常者という「あなた」。すなわち世にいう「常識」に満ちているのが「あなた」なのです。利用者は「あなた」が生きてきたそういう同じ世界に存在しながら、あなたの知らないまったく別次元の世界を生きてきたのです。ですから「あなた」と利用者の両者は同じ世界にいながらも、両者の関係性を考えると、そこには「あなた」が知らない途方もない距離があるといえます。障害特性が決定される基準は、「あなた」が生きてきた世界の基準であって、利用者が生きている世界の基準ではありません。だからあなたの「常識的な基準」で、利用者との関係性を築こうとすることは完全にまちがっています。それは良好な関係ではありません。多くの場合、そうした不都合な関係から生じる負担は利用者の側が苦しみとして背負うことになります。「障害者などいない。いるのは障害を作り出す健常者たちだ。」といわれていることにも、この関係性は大きく作用しています。
世界は広いのです。私たちはそのことを知らなくてはいけません。私たちの常識がおさまるほど世界は決して小さくないのです。端的にいうならば世界は私たちが理解できないほど広いのです。次元の異なる世界を生きてきた利用者との架け橋は、「笑顔」と「やさしさ」だけです。どれだけ支援が上達しようが、この架け橋という関係性が基本なのです。このことを、利用者と接する新人を含むすべての人に贈ります。
施設長 李在一
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