落ち葉 (short story)

落ち葉 (short story)

神社の拝殿へ向かう長い石畳の上には、赤や黄色に染まった紅葉が敷き詰められている。
その上を歩いていると、本当に絨毯の上を歩いているような感覚になる。

歩くことでわかる感触ではなく、見ていることでわかる塗り固められた石畳。
ひたすら歩いても辿り着けないような。長い、長い道のり。

さすがに長い石畳を歩くのは疲れた。階段を上るのは諦める。
拝殿までの階段横の狐の頭や足元には、何枚かイチョウの葉が落ちている。
ドロンと化けそうな位置に付いているせいか、今にでも動きだしそうだ。

――――――狐に化かされて迷子になるのもいいかな、とふと思う。
天狗に攫われたり化かされたりすることで起きる「神隠し」といわれるそれは昔からある概念だ。神隠しにあった本人は神域に消えたといわれるらしい。
迷子くらいならいいけど、戻れない領域にまで踏み込むのはな・・・。
まだこちらでしたいこともあるし、それは勘弁願う。

そっと油揚げ代わりのイチョウを置いておく。
「さよなら」と呟き元来た道を歩き始めると、遠くからカラスの鳴き声が聞こえた。

さとのこ

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